榛名湖日記 その5 二日目  ◇釣れたのは何匹? 前橋でゆ~ゆに入ったよ◇


2月9日(日)

 朝、目が覚めると既に日は昇っていた。
 わかさぎ釣りを楽しみにしていたパパは、朝4時に起きて、準備を整え、氷上に繰り出したらしい。
 ちょっと携帯で呼び出してみる。
 宿の窓から榛名湖が一望できるが、電話を受けて氷上で手を振っている姿あり。暗いうちから釣りを始め、既に三匹釣れたそうだ。

 パパ曰く、朝5時過ぎに釣り道具をレンタルしようと榛名湖畔を車で走ったら、ひっそりしているはずの岸辺は、釣り道具屋の灯りであかあか、道端はぎっしり路上駐車、まるでクリスマスの原宿のようだったとか。

 子供たちも起きてきたので、朝食を取らせ、再度パパに電話する。
 「朝食を取りに戻る? それとも届けようか?」
 パパはデリバリーサービスを頼んだ。よっぽど楽しいらしい。二年越しの計画だものね。
 とりあえずバターロールにレタスと貝割れ、生ハムを挟んで…玉子焼きと…あったかい飲み物を入れるものが無いな…そうだ、ベンダーでホットのコーヒーを買おう。
 子供たちに防寒着を着せて、連れて外へ。
 宿のご主人が入り口のスロープで雪かきをしている。おはようございますと挨拶すると、昨夜けっこう降ったんですよと教えてくれた。なるほど辺りは真っ白だ。

 榛名湖に張った氷の上にも雪が綺麗に積もっている。きゅっきゅっと踏みしめて歩くと、雪の下はすぐ氷だ。以前スイスで氷河ハイキングをし損ねてしまったが、もし歩いていたら、こんな感じかなと思った。
 雲が切れてきて、いつのまにか晴天だ。雪と氷の世界なのに春のように暖かい日だ。

 パパのところへ行くと、子供の砂遊び用バケツに、既に9匹のわかさぎが泳いでいた。結構釣れたじゃない。
 そう、まさかこの9匹で今日の収穫は終わりだとはこのときは思ってもいなかったのだ。

 携帯が鳴った。
 昨夜から泊まりで埼北の温泉オフをしていた紺碧七さんとtakayamaさんからだった。今日も群馬でどこか温泉巡りをするので良かったらご一緒しませんか?というありがたいお誘いだ。
 デジカメを壊してしまったので、どこか安い店は知りませんか?と伺ったところ、前橋にヤマダ電機の本店があると教えてくださった。
 では、昼過ぎに前橋で合流させていただきます。

 もっと真ん中よりの方が釣れるらしいと漁協の人に聞いたパパは、移動を決意。
 しかし…
 そう氷上わかさぎ釣りはまず、厚く張った氷に穴を開けなくてはならない。だがパパはドリルをレンタルしていない。ということは…他人の開けた穴を探してそこに釣り糸を垂れるしかない。ハイエナみたいだな(笑)。
 なかなか穴は見つからない。あっ、やっとあったらしい。カナが四つもあったよーと呼んでいる。

 並んで四つ開けられたこの穴は、まったく釣れなかった。釣れないから穴が放置されたのか。あたりひとつ無い。
 様子を見に来た宿のご主人が、あっちに見えるテントの人は、今朝もう150匹も釣ったらしいですよと教えてくれる。

 しかたないので再び移動。
 子供たちは半分凍った穴に雪や氷のかけらを入れてかき回すのに夢中。
 それにしても釣れないねぇ。
 11時まで粘ったが、さっぱり竿が動かないので、子供たちを部屋に戻すことにする。パパは一人、さらに一時間釣り糸を垂れていたが、やはり収穫は無かった。

 結局朝のうちに釣れた9匹だけを下げて、パパも戻ってきた。
 お昼はどこかファーストフードででも取る事にして、前橋に向かおう。ほっこりと雪の積もった林を見ながら榛名山を下る。途中で三脚を立ててカメラを構えている人もいた。絵になるものね。
 渋川を過ぎて結構道路は混んでいる。17号線を行くとヤマダ電機があったので入った。パパが新しいデジカメは光学ズームがあるのがいいなと言う。私は動画が取れるのにしたいなと言った。二人の希望を合わせて、値段が一番安いのは…即決。

(氷上わかさぎ釣りの様子は、後日現像してから画像を入れます。午後からは新デジカメで画像入り♪ しかしまだ操作に慣れていないので枚数少な目…)

 ヤマダ電機の駐車場にtakayamaさんたちに来ていただいて、次はtakayamaさんお勧めの、まえばし駅前天然温泉ゆ~ゆへ。
 子供たちにせがまれて雑誌の付録を組み立てていたので、アプローチは見ていなかったが、とにかく住宅街のようなところをどんどん進んでいく。裏道なのだろう。すぐゆ~ゆについた。駐車場も広く、とても駅から5分圏内にある施設とは思えない。


 明るく清潔で都会的な感じ。
 経営者の方が女性だというだけあって、群馬の他の温泉施設と比較して、洒脱さは群を抜いている。

 ヤマダ電機からここまで来る僅かの間にレナが入眠してしまったので、そのまま休憩室に運ぶ。
 野生児レナにはこのまま寝ていてもらえると、お会いできた紺碧七さん、takayamaさん、ONKEN21さんにご迷惑をかけずに済むのだが…。
 とりあえずパパが先に入浴。交代で私とカナが行くことにした。

 脱衣所はドライヤーの数などは少なめだが、ロッカーを通路で区切っていない分圧迫感が無く、中央にちゃんとベビーベッドも備え付けてある。最近の小奇麗な施設はオムツ替え台しか置いていないところも多いので、この点も赤ちゃん連れにはありがたい。

 洗い場でびっくりしたのは、シャンプーがリンスインシャンプーでなかったこと。つまりボディーソープ、シャンプー、リンスとボトルが三つある。これはかなり高級感のあるホテルでもないと考えられないことだ。こういうところに、女性の意見が反映されているのではないだろうか。

 場所柄循環浴槽かと思いそうだがとんでもない。こだわりを持って本格的に掛け流している。単に流しているだけでなく、きちんと一日一回は湯を抜いて専門業者が清掃しているので、レジオネラ菌はまったく発生していないと張り紙もある。今、循環装置を使った施設の清掃不足による問題が次々と明らかになっており、温泉施設の管理が問われるとともに、管理者の知識やモラルも問われているが、一利用者してはどこもここのように徹底してほしいものだと思う。

 肝心のお湯は、施設直下の地下1,500mから動力揚湯しているナトリウム-塩化物温泉で、黄色がかった淡い緑濁で、湯に沈めた手足がうっすらと見える程度。肌触りは特に特徴的ではないが、びっくりするほどいい匂いがする。年末に入ったリバートピア吉岡にとても似た匂いだ。華やかな柑橘系のオイルに似ている。最近ではこの匂いが温泉の匂いの中では一番気に入りつつある。ホント、いい匂いだなぁ。

 浴槽は内湯は変形長方形。露天風呂は長方形。街中なので眺めは何も無いが、露天風呂も間接照明や観葉植物などを置き、かなり都会的な雰囲気になっている。
 ただ、ここまで湯は本物に拘っているので、置いた観葉植物もイミテーションではなく本物ならもっと洗練されているのになぁとちょっと思った。



 休憩室はテーブル席だけかと思ったら、奥に座敷席もある。会社帰りの女性でも、子連れの家族でも、好みに合わせて席を選べそうだ。天井が高く採光が良いのが瀟洒に感じる秘訣なのだろう。

 少しだけ、みなさんとお話ができた。パパが明日は片品方面へスキーに行く予定だと話したらしい。みんなで、いろいろお勧めの温泉を沢山教えてくれた。
 どこに入ろうかな。楽しみだ。

 半端な時間だったが、夕食も兼ねて食事も食べてしまった。
 ほぼ食べ終わったとき、我が家のゴジラこと、レナが目覚めた。
 …寝起きはめちゃくちゃ不機嫌だ。とほほ。これではせっかく来たけどレナはお風呂にも入れそうにない。



 レナちゃんが寝ている間に、レナちゃんの分もがちゃがちゃをやってあげたよ。レナちゃんのはドングリに入ったチップの人形ね。

 暴れるレナを何とかなだめすかして、お礼を言ってオフはお開きに。
 今回も良い温泉を教えていただきまして感謝です。takayamaさん、紺碧七さん、ONKEN21さん、どうもありがとうございました。

 車を走らせれば、空は夕暮れ。
 若々しいオレンジ色の夕日も、やがて円熟した赤紫に変わり、濃紺の闇が落ちてくる。街のネオンが後方に過ぎていくと、赤城山麓にはきらめく夜景が…。
 榛名山の九十九折を登り、賑わう伊香保の温泉街も過ぎて、振り返ると冬の透明な大気にきらきらと下界の灯りが輝いている。渋川スカイランドパークの観覧車も小さく見える。思わず車を止めて見入ってしまった。

 さてさて、宿に戻り、早速わかさぎを唐揚げに。
 9匹釣ったはずが一匹足りないのは、既にパパが味見をしたあとだからか?


 子供たちは競って口に入れる。瞬く間に皿は空に。
 最後に残った大物を、カナが食べたいと手に取った。
 レナもレナも~とレナが絶叫。
 お姉ちゃんのカナは、一口食べて、レナの口元に持ってくる。
「レナちゃんも一口食べていいよ」
 こたえるまもなくレナは丸ごとひったくり、がぶがぶと全部口に押し込んでしまった。
 唖然とする私たち。
 一瞬置いて、大声で泣き出すカナ。
 …罪悪感に駆られたパパは、来年こそはもっと沢山釣ると誓うのであった。

つづく

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