荷物を運ぶ時に使えるように、管理棟の傍には弧輪車がいくつも置いてある。
これを二つほど借りて、駐車場を何度か往復した。
自分たちのバンガローに近い屋根のあるテーブル席をひとつ確保して、食器や調理道具はそちらに運ぶ。
荷物を運び終えたら子どもたちはパパとテニスで遊び始めた。
最初は川向うの、ちょうど駐車場より少し上流にある広場を使おうと思ったのだが、この、昔小学校だった空き地は今は防災用スペースとして空き地になっていて、立ち入ってはならないと札があったそうで、諦めて戻ってきてキャンプ場の敷地で遊び始めた。
よその中学生ぐらいの男の子もテニスが好きだからと仲間に入って、しばらく四人で打ち合っていた。
さっき管理棟の前で、お兄さんと寝そべっていた大型犬が犬好きの他のお客さんと遊んでいて、油断するとそのわんちゃんにボールを取られてしまうため、なかなかスリルのあるテニスだったようだ。
中津川村キャンプ場と言うと、あの管理棟の斜め前の囲炉裏にみんなで集まってわいわいお酒を飲んで、頑固そうなおやじさんと世話好きな奥さんがいらして、金属のにおいのする茶色の濁り湯があるところ、そんなイメージだった。
しかし、さっきパパがたまたま清掃作業をしていた奥さんに伺った話では、数年前にこのキャンプ場を経営していたおやじさんは他界されて、今は奥さんと息子さんの二人で取り仕切っているということだった。
息子さんはバンガローまで案内してくれたお兄さんのことだった。
キャンプ場は以前と何も変わっていないように見えるけれど、やっぱり8年の間にはいろいろなことがある。
おやじさんにまたいろんなお話が聞けるのかなぁと思っていたけど、それはもう無理なんだ。