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■奥秩父日記2■4-4


4.鰻の骨狂想曲

 鰻屋と日帰り温泉とどっちがメインなのかいまいちよく判らない。
 片方だけでも両方でもOKだが、基本料金は3時間分で、食事をすると30分延長してくれる。
 パパは先に入浴したかったようだが、空きっ腹でぬる湯にのんびり入るのはきつい。子供たちもお腹が空いたと言ったので、食事を先に取ることにした。

 席は各々仕切られていて、半個室みたいになっている。
 鰻重二つと温泉豆腐をひとつ頼んだ。
 立派な鰻重が運ばれてきた。
 すごーい、ゴージャス。
 ここの鰻、やわらかーい。

 突然カナが泣き出した。
 鰻の骨が喉に刺さったという。
 鰻丼の鰻の骨なんて、かめば食べられると思うけど、よくかまないで飲み込んだのかもしれない。
 ご飯をかまずに飲んでみなさいと言っても、嫌だと言うことをきかない。じゃあかんでもいいから、とにかくご飯を食べなさいと食べさせた。
 少し食べたら収まったらしい。
 あとはほとんど食べなかったが泣くのはやめた。


正徳寺温泉初花
鰻の養殖に温泉水
お豆腐作るも温泉水
あげくのはてに、冷水サーバーも温泉水ですよ、あなた


 食事を終えて温泉に入る前にトイレに連れていくと、カナが再び泣き出した。
 やっぱり骨が取れていないのだという。喉に刺さって痛い痛いと泣く。
 パパには先にお風呂に入ってもらって、とにかくカナをなだめることにした。
 どうしても取れないなら、やっぱりご飯を丸飲みしてみるしかないよ。

 厨房を覗き込んでお願いした。
「子供が鰻の骨を喉に差しちゃったらしいんです。申し訳有りませんが、ご飯を一口頂けませんか?」
 中で働いていた人がみんなで振り返って、心配そうにすぐに茶碗一杯のご飯を持ってきてくれた。さらにコップ一杯の水も。
 カナは泣きながらもなんとかご飯を飲み込んで、茶碗を空にするとようやく落ち着いた。

 カナが泣きやむと今度はレナがぐずぐず言い出した。ママがカナばかり世話を焼いているのが気に入らないらしい。
 姉妹で交代で騒ぐのはやめてよ。
 ぐずぐずを止めたのは音楽だった。耳を澄ますとBGMはディズニーの「いつか夢で」だった。まさか鰻屋でオーロラ姫のテーマを聞くとは思わなかった。
 



4-5.にゅるにゅるなのは鰻か温泉か?へ続く


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