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◆奥秩父日記2◆中津川の一日はのんびりと過ぎていく


巾着田の曼珠沙華と蔵の湯オフ

初日 2004年9月18日(土)

 昨日カナは七歳になった。
 七年前のあの日、港区の病院で産声をあげた。
 2,500gちょっとと小柄なサイズで生まれたあなたは、真っ赤な顔で力一杯泣き、私は生まれたんだと精一杯自己主張していた。

 あれから七年。
 今は字も書けるし算数もできる。
 昨日あったことがどんなにすばらしかったか人に伝えることもできるし、トラブルをひとつずつ躓きながらも乗り越えていくことができる。
 大きくなったね。

 誕生日のケーキに乗った七本のロウソクは、ふっと吹き消された。
 カナは2歳年下の妹と一緒に吹き消した。



 9月の三連休は、天気予報がこぞって行楽日和だと騒ぎ立てた。
 関東地方以外では雨も降ったりするらしいが、東京の空は全体的に霞んだような水色で雲の姿は無い。
 六時半には家を出たが、都内の道は既に混み気味、高速道路も流れているもののあと30分も経てば間違いなく渋滞になりそうな感じだ。

 鶴ヶ島JCTから県央道へ。
 今日最初の予定は、日高市の巾着田。
 高麗川(こまがわ)が蛇行してちょうど巾着型になった場所を巾着田と言う。巾着の底辺りに曼珠沙華の群落があって、9月後半が見頃、特に今年は例年より開花が一週間早かったとかで、ちょうど今週末が絶好の鑑賞日和なのだそうだ。

 曼珠沙華は彼岸花とも言う。
 名前からして仏教色の強い花だが、よく見るととても綺麗な形をしている。園芸品種の中にはピンクの花弁もあって、ダイヤモンドリリーと呼ばれるそれは覗き込むと花弁の内側にきらきらと光るところがあるのが判る。
 これは普通の曼珠沙華でも見られる。
 曼珠沙華は先に花が咲き、後から葉が出てくる。
 名もないところからいきなりにょきにょきと茎が生えてきて、ぽんと花を咲かせる。だから花が咲く前はどこに曼珠沙華が植わっているかまったく判らない。ある日咲いて、初めてああ、ここに植わっていたのかと判る。
 開花は気温ではなく地熱で決まるため、桜などと違って曼珠沙華の開花は日本全国北から南まで一週間と違わないのだそうだ。



 8時頃、巾着田到着。
 巾着の口の辺りがすぼまっている地形からしていかにも渋滞しそうだ。
 まだ朝だというのに凄い数の車が停まっていた。
 駐車場にはなんとか入れたが、ここがいっぱいになったら今度は巾着田に至る道も全て大渋滞になりそうだ。
 カナが車から降りたくないとぐずぐず言う。
 昨日もらった誕生日プレゼントのcocopadで遊びたくて仕方ないのだ。花より団子ならぬ、花より玩具だ。

 そこをなんとかなだめ降ろすと、今度はレナがかまってもらいたくてぐずぐず言い出す。
 まったく。
 なんてやっかいな子供たち!!

 曼珠沙華は川から少し離れたところにぎっしりと咲いており、その中に細い遊歩道がいくつか通っている。
 まるで草原が真っ赤に燃えているような光景は独特で、綺麗で・・・そう、確かに綺麗なんだけれども、あまりにも人が多すぎ。

 通路という通路はぎっしり人が歩いていて、何だか花を見に来たんだか、人を見に来たんだか。
 ぽつりぽつりとアルビノの花が混じり、真っ赤な中に白い花が咲いている様子がまた不思議だ。

 出店も出ていて、お弁当や漬け物、野菜などが売られている。
 酒蒸し饅頭とオレンジジュースを買った。今夜の分の野菜も少し。

 食べるのは車の中にしようと、駐車場から車を出せば、既に反対車線は強烈な渋滞。危機一髪というところだ。

[巾着田の曼珠沙華の画像は一足先にブログで公開]



 最初の予定では、今回は山梨側から秩父入りするつもりだった。
 中央道からアクセスして、季節柄果物狩りでも楽しんで、自遊人パスポートを使ってはやぶさ温泉に入って、三富村でいのぶた肉をバーベキュー用に仕入れて、雁坂トンネル経由で中津川入り・・・完璧。
 でもたまたま今日、東松山の蔵の湯で温泉系のオフが開かれるとお誘いがあったので、予定を180度変更した。
 山梨はまたの機会。

 渋滞対策として早朝に東京を出るのはいいが、蔵の湯オープンが10時でそれまでどこかで時間を潰さなくてはならない。
 だから巾着田経由を選んだのだが、巾着田に寄るなら10時に間に合わないかもしれませんねと、オフ幹事の本庄ネットの学さん。
 まさかぁ・・・とたかをくくっていたら、本当にぎりぎりだった。
 蔵の湯の駐車場に滑り込んだのが10時ジャスト。
 既に駐車場にはだだ星人さんのバイクや、晶さんの車が並んでいる。
 急がなくては。

 入り口手前に足湯があって、それから立派な門構え。
 下足ロッカーも受付もぴっかぴかだ。
 和風で統一してあるのが最近の小洒落た日帰り温泉の風潮。
 受付前で学さんを見つけた。
 もうみんなお風呂に向かったという。
 遅れてすいません。割引券ありがとうございます。
 あとは11時半にみんなで食事をしましょうというので、割引券だけ受け取りいったん分かれる。

 パパは先に買い出しに行ってくれるというので、ママだけカナとレナを連れて浴室へ向かった。
 オープンと同時にもうかなりのお客さんが入っている。従業員もてきぱきと動いている。

 子供たちを洗いながらふと振り返ると近くのシャワーで晶さんが髪を洗っているのを見つけた。
 子供たちに「ほら、キャンプファイヤーのお姉さんだよ」と言うと、二人ともそわそわ(キャンプファイヤーのお姉さんについては、平湯キャンプ場日記参照のこと)。
 内湯も綺麗だったがこちらは温泉が引かれていないというので、真っ直ぐ源泉岩風呂へ。

 ここのお湯は一度タンクにためたものを、濾過も過熱も加水も塩素投入も、そしてもちろん循環もさせずに、ただ男湯と女湯に分けて配給している。
 源泉温度が38度とぬるめのため、なんと浴槽の底を床暖房して温めるという画期的な方法で加熱している。
 想像したより大きめの浴槽で、12人ぐらいはゆっくりと入れるだろうか。木組みの屋根がついており、お風呂は円形。ぐるりと周囲全体が階段状に浅くなっていて、必然的に入る人たちはみんな内側を向いて座ることになる。
 この大きさと湯温、形と深さ、よく計算されているなという感じだ。湯量はかなり少なくしかもぬるいためみんな長湯をする。でも安易に循環や加水でしのがずに快適なお風呂を作るにはどうしたによいか、いろいろ考えたんだなぁと思わせる。

 海水の半分くらいの高濃度塩泉と聞いて、どんな風だろうとわくわくと想像していた。ぴりぴりっとくるのかな。ぷかぷかと浮くかしら。
 色はちょうど伊香保の黄金の湯みたいな感じ。黄緑色に茶色が混じった濁り湯で、底が見えないほどではないがしっかりと濁っている。
 ぬるめなので入ったときに急に感じるものは無いが、肌触りはきしきしぎしぎしと強く引っかかり、臭いは華やかさのある機械油系。体の奥まで何かじわじわと浸透してくるような温泉だ。
 熱すぎずぬるすぎず誠に適温。
 さっと入ってかーっと熱くなりたい人には、源泉槽から流れ出るお湯を利用した加熱浴槽もある。
 入っていたら手足がじんじん痺れてきた。これは群馬のリバートピア吉岡でも同じようなことがあったな。
 晶さんに「痺れない?」と聞いたら、血行がよくなったんじゃないでしょうか」という返事が返ってきた。なるほどね。
 縁につかまって体を浮かせてみると、確かに浮力を感じる。流石に濃いんだな。

 他にもいろいろ浴槽があるにも関わらず、ひたすら源泉浴槽に陣取ってしまった。あまりにここが気持ちよくて。
 気が付くと11時半近かった。あがって服を着たらちょうどぐらいだろう。



 オフに集まったメンバーの中には、蔵の湯のご主人、ひかるさんもいる。
 若い方だが、眼光の鋭さがとにかくただ者ではない感じだ。
 もっといろいろとお話を伺いたいところだったが、子連れでほとんど話らしい話にも加われなかったのが残念だ。
(後で晶さんに伺ったら、源泉タンクなど見せていただいたそうだ。いいなぁ・・・)。

 そんなわけで、我が家は早々に離脱。
 みなさんに別れを告げて、今日の夜は一緒に中津川村キャンプ場に泊まるはずの晶さんやだださんより一足先に、キャンプ場入りすることにした。

 蔵の湯の効能には、眠くなるというのがあるのに違いない。
 この先の道行き、眠いこと眠いこと。
「パパ、のどが渇いた、どっかの自販機で車を停めて」
「いのしし肉を買うまで駄目」
「じゃあ寝ていい?」
「駄目に決まってるだろ」

 パパは前回中津川に行く途中、秩父の町中でいのしし肉を売っているところを見かけたというのだ。
 それを見つけないと今夜のメインディッシュは無し。
 二人して車の中から目を皿のようにして両側に立ち並ぶ店を探す。
 ごく小さな肉屋を見つけた。
 パパがあれかもしれないと、道を戻る。
 ちょうど秩父市の庁舎の正面ぐらいだろうか。みよしと言う名の肉屋のウィンドーに並ぶ商品名は豚、牛、鶏・・・いのししとは書いていない。
 だが隣に同じ名前の食事処があり、「いのしし鍋」の暖簾が。
 これはいけるかも。
 しかしパパのいのししに対する嗅覚は凄いな。

 100g、680円。
 200g購入。
 焼き肉にしようと思っていたが、店の主が「鍋だ、鍋」と、鍋用に切ってくれたので、いのしし焼き肉と芋煮鍋のメニューは急遽変更、ぼたん鍋がメインディッシュと決まった。

 中津川渓谷の緑の中を走り、駐車場の急坂を降りて中津川村キャンプ場到着。
 ここはオートキャンプ場ではなく、車は駐車場に置いて吊り橋を渡っていく。
 流石に連休なので子連れファミリーが多い。川岸や木陰から子供たちの声が響いてくる。
 管理人さんにご挨拶してバンガローに案内してもらった。川も見えてちょっとしたテラスもついている。いい場所だ。
 火をおこしたりエアーマットを膨らませたりしていたら、すぐにだださんと晶さんが到着した。
 ちょうど雲行きが怪しくなって雨がぱらついてきたところだった。空は三時過ぎとは思えない暗さで、このまま本降りになったらどうしようと思った。
 私たちはバンガローを借りたが、だださんたちはテントサイトのはずだ。雨の中、だださんと晶さんはテントの設営をしているのだろうか。
 やがてキャンプ場のご主人が二人を伴ってバンガローサイトの方へ歩いてきた。何でも雨の中のテントは難儀だろうと、バンガローを貸してもらえることになったらしい。
 良かった良かった。
 しかも雨はその後すぐにやんでしまった。

 芋煮の材料はそのままイノシシと一緒に煮込まれ、鶏とネギは網で焼いた。
 キャンプ場の奥さんがマイタケの天ぷらを差し入れてくれた。天然物のマイタケだ。
 お酒はyuko_nekoさんが前回差し入れてくれた赤ワインとマル秘と書かれた新聞紙にくるまれた日本酒、そしてだださんが秩父で仕入れてきた赤ワインだ。
 yukoさんのお酒は、次回一郷一会オフの松茸プロジェクトで開けるという話だったが、松茸はカナの小学校の運動会で行かれない。飲んじゃえ飲んじゃえ。うーん美味しい。
 やっぱり美味しいお酒はyuko_nekoさんか紺碧七さんプロデュースに限る。
 明日は明日で紺碧七さん本人が登場するから、明日のお酒のことは考えなくていいだろう。

 キャンプ場の奥さんが現れて、さっき男性からうちに電話があったと伝えてくれた。ここ中津川村キャンプ場は、携帯電話の電波も届かないので、連絡を取ろうとしたら直接キャンプ場に電話を掛けて取り次いでもらうしかない。
 だが、掛けてきた人の名前を忘れてしまったので、誰か覚えはないかと言われる。
 誰かって・・・今私たちがこのキャンプ場に泊まっていて電話をかけてくる用事のある人と言えば紺碧七さんしか思い当たらない。用件も見当が付く。明日の食材調達をお願いしたのだが、何を買ったらよいか途方に暮れているのだろう。
 それはいいのだが、奥さんに聞かれても本名が判らない。だって知らないんだから仕方ない。だださんに聞いても忘れたと言う。
 みんなで顔を見合わせて、誰も電話をかけてきた紺碧さんの本名を知らないことに笑ってしまった。

 子供たちが寝た後大人だけで飲んでいたら、あっという間に9時50分になってしまった。
 中津川村キャンプ場は温泉付きキャンプ場だが、冷鉱泉なので湧かす必要があることから、入浴時間は限られている。
 何時から入れるかはそのときの状況次第だが、ラストは夜10時、そして朝風呂は無しだ。
 あと 10分しか無い。
 慌てて晶さんと二人、タオルを取ってきた。
 男湯は岩風呂、女湯は桧。
 もう誰もおらず貸切だ。
 もうボイラーを止められてしまったのか溜め湯になっているが、ほどよいぬるさで気持ちいい。鉄分が濃い赤茶色に緑も混じったような濁り湯だ。
 あまり気持ちよくて晶さんとつもる話をしながら、ついつい長湯をしてしまった。
 突然どんどんと脱衣所の外からドアを叩かれた。
「おーい、いい加減にしろよ」とパパだった。
 出てみたら11時半だった。
「10時までって言われて一時間半も入っているやつがいるか」
 きゃー、そんなに時間が経っていたとは。
 すいません、キャンプ場のご主人と奥さん。
 あんまりいいお湯だったんで、時間を忘れてしまいました。


二日目「イワナつかみどりエキサイト」へつづく・・・

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