子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★★ 温度は比較的ぬるめ
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★☆ 内湯側の脱衣所にベビーベッドあり
子連れ家族のための温泉ポイント
垂玉温泉山口旅館は泊る地獄温泉から近いし、温泉自体もとても良さそうなので是非とも入りたかったが、ネックになっていたのは立ち寄り入浴時間の短さだった。
11時から15時(受け付け締め切りは14時半)。
始まりが11時と言うのは遅めだし、終わりが15時と言うのは関東の温泉旅館では一般的だが今回チェックした九州の温泉施設の中では飛びぬけて早い。多くが21時ごろまで受け付けてくれるので。
といっても日帰り温泉専門じゃないし旅館なら宿泊者優先ということで、仕方がないっちゃあ仕方がない。
「じゃあ他を敢行する前に先に寄っちゃえば、その垂玉温泉」と夫。
「えっ?」
・・・それって思いもつかなかったナイスアイデアだよ。
やがて阿蘇山の麓にちらりと可愛らしい電車が見えた。
「南阿蘇鉄道だ」って夫は嬉しそうに言うけど全然わからない。私は鉄道関係の知識は白紙に近い。
さらに阿蘇山の中腹の辺りには雲とは違う白い煙が上がっているのが見える。
「あれって湯けむりかなぁ」と今度は私。
「多分今向かっているのがあのあたりだと思うよ」
えっ、そうなんだ。じゃああの湯けむりは垂玉温泉か地獄温泉か、あるいはその両方かなんだ。あそこに行けばきっとぼこぼこシューシューと温泉が湧いている。
阿蘇山は巨大なカルデラ型火山で、外輪山に囲まれた二重構造になっている。
今走っているのは外輪山の内側の凹みの部分で、白川の水を引いた田園地帯に家がぽつぽつと建っているようなエリアだ。
さっき見えた南阿蘇鉄道の電車の線路を渡って、阿蘇山本体の湯けむり上がる中腹目指して坂を登り始めると、道はさっきまでの直線や緩やかなカーブと異なり、思いのほかいきなり九十九折になり、どんどん山の中に分け入っていく雰囲気になった。
ふいに正面に二本の細い滝が見えて道は右へ急カーブし、そこが垂玉温泉山口旅館だった。
車を停めてドアを開けると、いきなりゆで卵のにおいが出迎える。
うわぁ、そうそう、このにおいと嬉しくなる。
そういえば中腹の湯けむり目指して登ってきたはずなのに、山道に入ってからは近すぎてそれが見えなくなってしまい、すっかり忘れていた。
浅い三角屋根の本館は古い部分と修繕した部分がうまくマッチしている。
日帰り入浴の受付は独立した窓口があって、建物の中に入らなくてもいいようになっていた。
受付の横に「滝の下の露天風呂(滝の湯)は、宿泊者専用のため、外来入浴はお断りします」と毛筆体のフォントでプリントアウトした貼紙があってあるのを見て、初めてさっき見た手前の滝の所に露天風呂があるんだと知った。
実はここ、垂玉温泉山口旅館に関しては、夜になってショックなことをひとつ知ることになる。
地獄温泉清風荘宿泊者は無料で入れたのだ。しかも宿泊者専用の滝の湯も含めて。
でもまあこの時点では私たちは何も知らなかったので普通に入浴料を払った。正直この件に関しては、知った後の清風荘にいい感情が持てなかった。
せめてチェックイン時に教えてくれればUターンしてでも滝の湯に入りに戻って来たのに。
駐車場から見た山口旅館はシンプルな建物に見えたが、実はやはり斜面に増改築を繰り返した造りだった。
受付の先を右に曲がると短い坂道になっていて、頭上を渡り廊下が通っている下を潜る。
すると右手に湯小屋らしい建物が見えて、右にも正面にもお風呂があるという表示板が出てきた。
パパはどっちに行く?と迷っているようだが私は両方行くつもりで、まずは手前からだなと勝手に決めた。
手前のお風呂はかじかの湯と名付けられているようだ。
脱衣所は誰も使った様子がなかったので独占かなと思ったが、樽風呂に一人先客が入っていた。
そう、かじかの湯は二面の壁を取り払った半露天風呂と、いい味を出している二つの樽風呂で構成されていた。
思わず頬がほころびそうになるいい感じのお風呂だ。特にこの半露天風呂。
適当な感じの湯口の竹筒とか、成分が染みて一部色の変わった板壁とか、お湯の流れに沿って赤茶色になっている石の床とか。
隙のない小奇麗さでもなく、B級でも無く、落ち着く感じ。
ごくごくわずかに白濁したお湯はぬるめで、湯口に鼻を近づけるとはっきりとした金気臭。不思議だ。駐車場ではあんなにゆで卵の臭いがしたのにここでは金属の臭いが強い。
入ってすぐにべたつくような肌触りがある。まとわりついてくるようなお湯。
これは何だか入ったらなかなか出られなくなりそう。
樽風呂は二つあったので、先客がいない方に入ってみた。
こちらもぬるめ。何故かヒバの葉のような物がネットに入れてお湯に漬けてある。
そしてこの樽風呂に入って初めて判った、脱衣所を使った形跡がないのに先客の女性がどこから来たのか。
樽風呂の隣に細い階段の通路が見えていた。宿泊者専用じゃないよねぇ? 行ってみようかな。
階段を昇って通路を通るとドアがあって、ドアを開けるといきなり大浴場だった。いきなりと言うのは、足元がそのまま浴槽だったからだ。
なんだ、外でどっちのお風呂から入るか迷ったけど、中で繋がっていたんだ。着替えなくても行き来できるから便利(ちなみに男湯は繋がっていない)。
窓の広い綺麗な大浴場で、かじかの湯のような鄙びた感じは無い。でも天井の木組みはやはり年季が入って黒々としている。
窓の外はちょうど崖になっているのかな。見晴らしがよく、さぞや紅葉の季節は綺麗だろう。
お湯はかじかの湯より気持ち白濁が強い。こっちはゆで卵の臭いもする。
その後はまたかじかの湯に戻った。
先客の人も上がってしまってしばらくは一人きり。
気温の高い日のぬるめのお風呂と言うことで、本当に後を引く。
いい湯で出たくない。後ろ髪引かれる。
湯上りはぬるめだったけど、しっかりあったまっている。
しっかりあったまっているけど、汗が噴き出すような暑さじゃない。
ちょうどよく中からほかほかしている。
きっとこれから九州の温泉に沢山入れるだろうけど、いきなり最初からノックアウトされそう。