子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度☆☆☆☆☆ 泉質★★★★★ とにかく激熱なので、かなり水でうめないと赤ちゃん・子供の入浴は無理
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★☆ ベビーベッド完備、休憩室は無い
子連れ家族のための温泉ポイント
飯坂温泉の共同浴場は全部で九つ。どれもあっついお湯で知られている。
一番有名なのがこちらの鯖湖湯(さばこゆ)。松尾芭蕉が立ち寄ったという言い伝えがある。いや言い伝えというのは正しくないか。奥の細道に行ったことが書いてあるのだから。
今年の桜は全般的に早く、特に東北地方は関西より早く咲いたと言われるほどだったのであまり花の期待はしていなかったのだが、飯坂温泉に近づくと並木の花水木が満開。嬉しくなる。
住宅地の中に古い塀などあって雰囲気のある飯坂温泉。観光協会であるパルセ飯坂からゆっくり5分程度歩けばヒバ造りの堂々たる鯖湖湯到着。この共同浴場はホント好き。特に建物が。
入口が既に男女別なので20分位ねと言う夫に「出るときに声を掛けてね」と言って中に入る。
飯坂温泉の入浴料はどこで払うんだっけなと思ったら、券売機があって、受付にそれを受け取る人がいた。
ちょうど女湯の下駄箱は空っぽ。おお、初めての浴室独占かも。今まで来た時はいつも混んでいたから嬉しい。
鯖湖湯の浴室は朝の光が差しこんで静かで絵になる。静かだ。思ったより明るい。共同浴場らしく脱衣所と一体になった作りで、脱衣所の隅にはベビーベッドもある。
掛け湯をして入ってみると拍子抜けするほど熱くない。受付の女性が「熱いかもしれない。熱かったらホースで水を入れていいですよ」と言っていたが、もう自分にとってちょうどいいという温度。でもこのとき浴槽に設置された温度計は46度を示していた。絶対嘘だ。自宅のお風呂と同じくらいだから体感温度43度ってところ。
ちなみに後から観光会館の方に伺ったお話では、通常は46~48度に調節してあるそうだ。地元の人たちは熱いお湯に慣れているからこれぐらいでちょうど良いらしい。普通の観光客は48度はもちろん46度でも入れないだろう。そういう時は無理せず加水して下さいとも言っていた、ただし、同浴者に断ってから。
無色透明でふわっと肌の上に何かジェル状のものが層を作っているように、あるいは見えない羽毛の肌掛けが掛かっているかのように、不思議な手触り。
甘い石のにおい、ほんのりと。
すっきりきれいなお湯で贅沢気分。肌の上をするすると滑る感触。旅行一番最初のお湯がここで幸せだぁ。
湯上り、全然熱くなかったのに何故か腕とか腿とか真っ赤になっていた。びっくり。なんでだろう。まさかホントに46度だったのか?
熱くなっちゃって汗が引かない。上がる時になって次のお客さんが二人ぐらい入ってきた。湯上りの肌はパウダーをはたいた系のサラサラ。
【以下は2004年訪問時のレポート】
鯖湖湯は古名を佐波来湯、日本武尊(やまとたけるのみこと)の病を平癒した伝説や、松尾芭蕉が旅の途中に立ち寄ったことで知られる。
松尾芭蕉は鯖湖湯にて旅の疲れを癒し、飯坂温泉の南にある医王寺にて「笈も太刀も五月にかざれ紙幟(おいもたちもさつきにかざれかみのぼり)」と句を残した。
長らく共同浴場としては日本最古の木造建築として、明治以来の姿をとどめてきたが、平成5年、当時の面影を残しながらも新しい建物に生まれ変わった。
今ある鯖湖湯はリニューアル後の姿だが、地元に密着した共同浴場でありながら、観光名所としての風格も備え威風堂々としている。
鯖湖湯を利用する観光客は、少し離れたパルセ飯坂の駐車場を利用することになる。パルセ飯坂というのは、飯坂の観光会館だ。ここに車を停めて5、6分歩く。
途中に八幡の湯という共同浴場もある。
朝早かったので、地元の方たちが洗面器を手に出入りしていた。ここに入るのも良いかなと思ったが、当方子連れなので最初の予定通り観光客向けに多少はぬるめてあるという鯖湖湯に向かうことにした。
鯖湖神社の隣が鯖湖湯。入り口からして男女別。中に入ると入浴券の自動販売機があり、そこで大人100円、子供50円の券を買い、受付の箱に入れる仕組み(当時の料金)。
中はとても明るく、右手に脱衣所、左手に浴室。しきりが全くなく、段差だけ。奥にベビーベッドもあった。
飯坂温泉の共同浴場は熱いことで知られる。案の定、先に浴室に降りた6歳の長女は、あまりの熱さに掛け湯すら躊躇しているようだ。
なんの、先日の四万温泉御夢想の湯に比べたら熱い湯なんてないさと思い、ざばっと自分にかけてみると・・・おお熱い。
足がじんと痺れた。
うん、こりゃ熱い。
見ると四角い浴槽の両端に、それぞれ水道がありホースが繋いである。が、しかし、朝早く地元の人の利用がほとんどなのか、どちらのホースも浴槽には伸ばされず、止められたままだ。
すなわちこれが薄めない飯坂温泉そのもの。
子供には洗面器に水を汲んでこさせ、一方で別の洗面器に浴槽のお湯を汲み、混ぜ合わせて掛けてやった。何度かそれを繰り返して、あとは本人にやらせることにした。
自分はそろそろと入ってみる。
むむむ。
熱湯なんとかショーみたいだ。
そうとう何度も掛け湯をしないと入れない。掛け湯は足はすぐ馴れたが、上半身はひりひりするほど熱く感じる。
それがお湯に身を沈めると、今度は上半身はすぐ馴れるのに、足が猛烈に痛み出す。特に膝下。膝下がじんじんひりひり、やけどを負ったみたいだ。
数秒で上がる。
上がってもまだ膝下が痛い。触ってみたらずきずきした。しかもちょっとしか入れなかったので上がると寒い。
そこでもう一度入る。
今度はもう少し長く入っていられる。それでも足は痛い。
それを何度か繰り返してようやく寒気が止まった。
これではとても子供は入れないかなと思っていたところ、もう一人観光客らしい若いお姉さんが苦労しているのを見て、地元の人が反対側の水道ホースから水を出してくれた。他の人たちも、入れずにいた娘を見て、あっち側はぬるくなってきたから入ってごらんよと誘ってくださる。
「水の出ているところなら大丈夫だから」と言われて、そろそろと身を沈める。
私も娘の隣に入れてもらう。
おお、適温。
「熱い」しか考えられなかったさっきと違って、お湯を楽しむ余裕も出てくる。鯖湖湯のお湯はほんの僅かにゅるにゅるする。臭いや味はほとんどない。湯上がりは驚くほどつるつるすべすべ。ちょっと何かでコーティングされたようなつるつる感だ。
熱い熱いと思ったけれど、加水無しの純度の高い鯖湖湯と、水を加えて快適な温度に冷めた鯖湖湯と、両方いっぺんに楽しめたのは幸運だったかもしれない。