会津東山温泉の庄助の宿瀧の湯に戻ってきたのは5時半頃。
夕食が6時からだからほぼ良い頃合い。
まずいきなりパパは受付で、さっき運転前で利き酒ができなかったので良かったら今から頼めませんかと新しい盃を借りた。そう来たか。
私もさっきは時間が無くて飲めなかった一本を賞味する。
「夕食のお酒はどれにする?」
「今の会津ほまれ淡麗辛口も良かったけど、やっぱりさっき飲んだ弓月」
「俺は会津ほまれ淡麗辛口かな。じゃあ弓月と二本頼もうか」
お部屋にシンプルな浴衣も用意されていたが、ロビーのカラフルな色浴衣も選べるということで黒い地に薄桃色の花が描かれた浴衣と芥子色の帯を選ばせてもらった。しかし帯は上手く仕えず結局普通の浴衣に付いてきた紐で結ぶ羽目に。
とほほ。次はちゃんと勉強しておこう。
大広間での夕食になるが座席はゆったりと取られていてまだあまり他のお客さんも来ていない。
誕生日サービスのハーフボトルワインが運ばれてきた。
「高畠ワイナリーのワインでご好評いただいております」
見せてくれたラベルには確かに山形の高畠の文字が。確か前に行ったことがあるよね、高畠ワイナリー。
本当にこれは美味しかった。サービスだからそんなに期待していなかったんだけど、本当に美味しかった。
思うんだけど、福島の宿って全身全霊で可能な限りのサービスをしてくれる感じ。これが首都圏なんかだと見返りの効果とか考えて効果が薄いところは割り切って手を抜いたりしそうなところをこちらは本当に力いっぱいサービスしてくれる。
今日、ちょっと辛口なことを書いてしまったかもしれない芦ノ牧温泉にしても同じ。打算ではなくもてなそうと言う気持ちをとても感じる。そういうところ凄いと思う。そしてありがたいと思う。
料理もとても美味しかった。
ひとつひとつが本当に美味しくて、宿泊回数は多くても意外と宿でちゃんとした夕食を食べていない私の少ない経験から、今まで一番美味しかったのは飛騨のあそこだなとか思うんだけど、そこと比べてもいいくらいに美味しかった。
世話をしてくれた仲居さんも親切で、会津牛の朴葉焼きに火を入れるのをちょっと待ってほしいと言えばまた良いタイミングに加減を聞いてくれるし。
美味しい美味しいと味わって至福の時間を過ごしていると、ちょっとちょっととパパが時計を指さす。
「そろそろ行かないと残る2軒を回れないよ」
そうだった。6時から食べ始めて時間には十分余裕があると思っていたのに、気が付いたら7時半近い。
東鳳と千代滝の立ち寄り入浴は8時までだ。
でもあんまり料理が美味しかったので急ぐ気になれなかった。時間を早回しにしてしまうのがもったいなかった。結局最後のデザートまで同じテンポで食べ続けてしまった。